山陶園

 
陶器楽園シリーズ〜山陶園〜<さんとうえん>
魅せる器「山陶園」

今回ご紹介するのは、阿蘇市「山陶園」さんの焼き物です。
阿蘇の自然の恵により生み出されるその陶器には、心を掴むパワーがあります。

阿蘇の自然を手の上に

阿蘇くじゅう国立公園の麓に、山陶園の山下さんは工房を構えています。
世界最大級のカルデラを有し、火口付近の荒々しさと、火口から遠ざかるに連れて多くの植物が育つ草原の穏やかさのコントラストがとても美しい場所です。
またこの地域にはかつて「坊」と呼ばれる僧侶の住まいがありました。
「生きることを修める」という修行は、様々な解釈はあるとしても、多くは「感謝」や「思いやり」を自他ともに持ち、行動することを基本としています。
そのためには、自分と向き合い、人の機微に敏感になるように五感を鍛えます。
冬の寒さや、春の風の匂い、夏の眩しさ、秋の美しさなど、日々の小さな変化を感じとる力を自然の中に身を置き、鍛えていきます。
そんな雄大な自然の中で育まれる感性と、豊潤な材料たちを活かした作品を生み出しています。

移住

阿蘇好きな父親の影響を受けて、福岡から阿蘇へと移り住んだ山下さん。
民陶としての作品作りを行なっています。
民陶とは、江戸時代に藩御用達であった「官窯」に対して、「民窯」という民衆が主体となって作られてきたものです。
「官窯」は華麗や豪華なものが多く見られますが、民陶は素朴で健康的な美しさを特徴としたものが多く見られます。
高価な骨董美術品というものではなく、生活に密着した日常を彩る芸術です。

そんな民陶としての作品作りは、土や釉まで、全て自分で調達するところから始まります。
山に入り、土を集めます。様々な色の土を用意し、独自に混ぜ合わせていきます。
阿蘇という土地柄特有の火山灰や溶岩を使ったり、古い火山灰や近年の火山灰を混ぜ合わせたりと、多様な土を用意し、器の色味や表情を表現していきます。

活火山阿蘇

土だけでなく、釉も自然の中から調達します。
陶器の表面に塗るガラス層の釉は、吸水を防いだり、コーティングすることで丈夫したり、光沢を与え装飾としても一役買います。
材料は種類によって様々なものがありますが、代表的な物としては「灰釉」があります。草木の灰と砕いた土石を混ぜ合わせ水で熔いたものです。
釉は、素焼きの後に施し、本焼をすることで溶け、表面でガラス質になります、
山下さんは、この釉にも。阿蘇の草木や、工房周りの竹を燃やした灰など使って作品を仕上げます。
土や水、岩や草まで、全て自然の中から調達することをこだわりに生み出されています。

作風は、民陶だけあって、使う方の姿を浮かべて作られたと思えるものが多くなっています。
例えばお茶碗でも、窪みが持ちやすい、手触りが心地よい。など。
日常の中で使いやすく、生活に溶け込むものが多くなっています。

その上で魅せられるのは、独自に調合した土によって表される色味です。
溶岩や、火山灰などが混ざった独特の模様は、迷彩のようでもあり、銀河の星のようにも見えます。
深みのある色合いは、和食にも洋食にもしっくりと合います。
使いやすいデザインでありながら、重厚感のある作品は、日常の食卓をまるで高級レストランへと変えていきます。
モダンであり、アンティークという不思議な感覚を持った作風です。

それらの作品一つ一つから、強いエネルギーやパワーを感じます。
学びを重ね磨かれた技術。
修行僧たちが「人として当たり前の生き方」を極める為に五感を鍛えた場所で育まれる感性。
悠久の昔から噴火と再生が繰り返されてきた火山という膨大なエネルギーを含む土地。
土、木、水、岩、草と人では生み出せない恵み。
その全てが合わさって作り上げられるその作品から感じられるパワーは、目にした人を引き付けていきます。
まるで世界最大のカルデラが、この手の上にあるような感覚があるのです。

時には畏怖を抱くほどの雄々しさ、全てを受け入れられるような包容力、小さな花を育てる繊細さ。
そんな自然の魅力を、ギュっと凝縮し、手で触れて感じられるような「山陶園」山下さんの作品。
みなさまもぜひ手の平でその作品を感じてみてください。

 
 
陶器楽園シリーズ〜山陶園〜<さんとうえん>
オリジナル向付け皿

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